今のデザインにおいて重要だと考えられている問題や課題を掘り下げる良書 -姿勢としてのデザイン
Post on:2019年5月24日
デザインのあり方や可能性、デザインが人々の生活に与える影響は劇的に変化しています。その変化に対して、デザイナーたちがその役割をどのように果たしてきたか、デザインについての見識を深めるお勧めの本を紹介します。
デザインと真剣に向き合いたい人に特にお勧めします。
本書は『HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由』の著者であるアリス・ローソーン氏の新刊で、良いモノを作りたいとデザイン愛に溢れた一冊です。
紙面のキャプチャで、中身を少しだけご紹介。
本書はロンドンのアート雑誌「Frieze」に連載されたコラムと本書のために書き下ろしされたコラムが一冊にまとめられており、著者の鋭い視点で今のデザインにおいて最も重要な問題や課題が掘り下げられています。
今なら、本書のプロローグ全文が公開されています。
デザインについて語る時に「アートより下」というような表現は、間違っています。アーティストは作品に対して自由に自己を表現できるのに対して、デザイナーはクライアントや使用環境など無数の制約の中作品を作ると考えられていました。
しかし最近ではデザインという分野そのものと、デザインが人々の生活に与える影響は劇的に変化しています。
ここ数年の間で、デザインのあり方や可能性を変えるデジタルツールが大量に出現しています。例えば、クラウドファンディングを使えば個人でも資金集めができます。これは一昔前では考えられなかったことです。
デザインの可能性で印象的だったのは、医師不足をデザインで解決した話です。医師とデザインなんてまったくの無関係ですが、その発想はなかったと思いました。現在ではそれが全国規模に広がっているそうです。
身近なデザインについても、興味深い話が満載です。ハンバーガーメニューを見たことがあると思います。発祥は1981年にゼロックスのコンピュータ用にデザインされたアイコンで、2006年にローレン・ブリクターがAppleに在職中にiOSアプリのスペースを節約するメニューのシンボルとして復活させました。
UIのデザインは比較的新しく、これからのチャンスが多くある分野です。
巻末には本書で掲載されているデザイナー、そしてデザインプロジェクトの概要がまとめられています。
姿勢としてのデザインの目次
- 姿勢としてのデザイン
- アティテューディナルデザインとは
- デザインとアートの違い
- 甦るクラフト
- モノの進化と淘汰
- バック・トゥ・ザ・フューチャー
- デザイン界はいまだに(シス)男社会か
- デザインにおける「色」の問題
- 祭典の楽しみ
- 選択の自由
- 制御不能
- 好ましいデザイン
- 最悪の事態が起こったとき
デザインが人々の生活に与える影響は大きくなっています。デザイナーに限らず、良いモノを作りたい人、良い環境を作りたい人、デザインに対して真剣に向き合いたい人のきっかけになる一冊です。
献本の御礼
最後に、献本いただいたフィルムアート社の担当者様に御礼申し上げます。
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