マンガやゲームに登場する異形なるもの「モンスター」をどのように表現するか、怪物創造の解説書 -モンスターを書く
Post on:2023年8月10日
「吸血鬼」「ゾンビ」「ドラゴン」「エイリアン」「幽霊船」「呪いのアイテム」など、マンガ、ラノベ、ゲーム、TRPGなどに登場する異形なるもの「モンスター」を創作者としてどのように表現するか、怪物創造の解説書を紹介します。
実際には目にしたことがない、リアルではない、これまで存在しなかったものをどうのように表現するのか、知的好奇心がくすぐられます。
創作のガイドブックとしてだけでなく、H・P・ラヴクラフト歴史協会メンバーによるモンスター論も楽しめ、モンスターに関する知識も深まる一冊です。
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本書は、先日発売されたばかりの新刊書!
創作向け類語辞典シリーズ(最新刊は6月発売「対立・葛藤類語辞典」紹介記事)で人気のフィルムアート社から、本書はモンスターの創作に特化された解説書です。今回は辞典ではなく、マニュアルのような感じで読めます。
版元様より許可をいただいたので、紙面のキャプチャを少しだけご紹介。
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本書は三部構成で、全21章が収録されています。本書で扱うモンスターは多岐に渡っており、ゴジラやフランケンシュタインなど映画や文学に登場するモンスター、ドラゴンや吸血鬼など基本的のモンスター、サメや自然災害など現実世界のモンスター、ネッシーやビッグフットなど未確認生物のモンスター、幽霊船や呪いのアイテムなどモンスター的な諸々があります。
共通しているのは、どれも恐ろしいモンスターであることです。
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モンスターを表現、書くときに大切なのはルールを決めておくことです。物語の中でモンスターが担う役割が何なのか、どのように影響を与えるのか、登場人物にどのように絡んでいくのか、悪者なのか正義なのか、モンスターを定義づけます。
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モンスターのルールを決めたら、キャラクターシートを作成します。外見の特徴、体力、攻撃力、防御力、ステータスなど、ゲームなどでお馴染みの項目ですね。
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ステータスやスキルも数値化しておきます。特殊能力がある場合は、その能力についてもできるだけ詳細に記述します。
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本書ではコラムも充実しています。映画や文学などの作品に登場したモンスターがカテゴリごとに解説されており、そのモンスターの登場作品や基本的な表現方法、サメや自然災害など実在するものをどのようにモンスター化したのかなど、実例を紹介しながら細部まで解説されています。
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それぞれの項目について、詳しい解説もあります。モンスターの大きさをどうするか、確かに大きなモンスターであれば、その巨大さで圧倒されます。また、小さいから怖いモンスターというのも存在します。目に見えないくらいの小さいサイズだからこそ恐怖を感じます。
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モンスターならではの特殊スキルを考えるのが楽しい、という人も多いと思います。マンガやゲームでもそのキャラクター独自のスキルは、一つの見せ場になります。また、強力なスキルは発動に条件が必要だったり、回数などなんらかの制限を設けることで、バランスを取ります。モンスターのスキルは恐ろしさを表現するだけでなく、ストーリーにも大きな影響を与えます。
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フィクションを書くときによく受けるアドバイスに「語るな、見せろ」というのがあります。これは簡単に説明すると「それは恐ろしいモンスターです」と読者に語るのではなく、何がどう恐ろしいのかを読者に見せるということです。本書ではさまざまな作品から描写方法やビフォーアフターが解説されています。
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書くときには、独創性も重要なポイントです。同じアイデアや同じ前提が同じ扱い方をされていたら、それは使い古された表現です。ただ、モンスターによっては多くの人に認知されている共通点もあります。たとえば、吸血鬼の圧倒的なパワーや弱点は知っています。基本となる型が使い古されたものにならないように、ある程度の独自性に創作者の創意工夫が問われます。
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巻末には、「クトゥルフ神話」の生みの親H・P・ラヴクラフトによる短編が、解説つきで収録されています。
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また、付録には「モンスター用語の手引き」があり、「触手がのたうつ」「眩惑のごとき」「潜み蠢く」などのラヴクラフト語集もまとめられています。
モンスターを書くの目次
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モンスターを書くの目次
「創作者のため」とありますが、一読者としても楽しめる怪物創造マニュアルでした。恐ろしいモンスターを表現するために、「恐ろしい」と単に書くのではなく、その恐ろしさが感じられるように五感に訴えかけるような生き生きとした表現が必要となります。また、さまざまなモンスターに関する生い立ちや知識も得られるので、読み物としても楽しめます。
献本の御礼
最後に、献本いただいたフィルムアート社の担当者さまに御礼申し上げます。
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