Appleの白に見えるシーシェルグレー、レッドソールの魅力的な赤、世界でもっとも酷いと言われている色、デザインやイラストでよく使用する色の見識を深められる一冊 -色のコードを読む

色をどのような仕組みで感じていると思いますか?
諸説ありますが、ヤングとヘルムホルツの学説によると、網膜の奥に赤・緑・青の波長を感知する錐体細胞があり、その波長の強弱の組み合わせを脳が色として解釈します。3種類の錐体細胞があるため「3色覚者」とよばれ、その色の組み合わせは100x100x100の100万色です。さらに4種類の錐体細胞をもつ「4色覚者」もごく僅かにいて、その人は1億の色相を見ることが可能です。

色に関するさまざまな役立つ知識、色の疑問や迷いを解決するヒントが満載の良書を紹介します。世界で最も酷い色と言われているPantone 448 Cは何のためにつくられたのか、iPhoneの白に見えるほどごく淡いグレー「シーシェルグレー」はどのようにできたのか、読んで楽しく学びもある一冊です。

色のコードを読む

本書は色に関する本ですが、よく紹介する配色本ではありません。色に関する知識やトリビアが詰まった、新しい発見がある読み物です。身の周りにあるものがなぜこの色なのか、明日の重要な会議に何色の服を着ればよいか、今描いているイラストの髪は何色が最適なのか、そういった疑問や迷いの助けになる本です。

色のコードを読む

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ISBN 978-4-8459-2117-1
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著者: ポール・シンプソン
訳者: 中山ゆかり
出版社: フィルムアート社
発売日: 2022/12/24

版元様より許可をいただいたので、紙面のキャプチャを少しだけご紹介。

紙面のキャプチャ

本書では、11色について色に関する知識や文化、トリビアがまとめられています。あなたが好きな色、デザインやイラストによく使う色はありますか?

紙面のキャプチャ

色といえば、当ブログでも毎年紹介している「Pantone Color of the Year」はデザイン業界にも大きな影響を与えます。2023年のトレンドカラーは、「ビバ マゼンタ」。その色を説明する「この活力に溢れたレッドはよろこびをあらわした新しいカラー、大胆でウィットに富み、すべての人を包み込みます。」のように、色に穏当な表現が使用されるようになりました。

紙面のキャプチャ

各章から私が特に興味を覚えた箇所をいくつか紹介します。
赤い色は、女性の魅力を引き立てる色の一つ。たとえば、口紅にはさまざまな色味の赤があり、古代ローマの女性はフカスという植物から赤い口紅をつくっていたそうです。映画やファッションでも赤は魅力的な色として使用されており、靴底が赤いクリスチャン ルブタンの「レッドソール」はアシスタントが赤のマニキュアを靴底に塗ったことから誕生したそうです。Pantoneの色番号は18-1663-TPXです。

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色は絵画にも印象的な色がたくさんあります。ゴッホといえば、黄色。「ひまわり」「黄色い家」「星月夜」など黄色を使用した絵画が多数あります。ゴッホによると「黄色は、神をも魅了できる色だ」という言葉があります。

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青という色は、世界各国でもっとも人気のある色で、さまざまな国々のランキングで上位に位置します。フランスの芸術家イヴ・クラインによると「青とは、見ることのできないものを見えるようにした色。青には次元がない。他の色のもつ次元を超えたものなのだ」と。自然界に青が少ないのも関係しているかもしれませんね。

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今日では高貴な色のイメージが強い紫は、ナポレオンや聖徳太子などが着ていたからでしょうか。当時は紫の染料は高価でした。また、紫と言えば、モネのスミレ色やプリンスのパープルレインを思い浮かべる人も多いと思います。「1999」とかたまにすごい聴きたくなります。

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緑も人気のある色で、多くの国で青に次いで2番目、あるいは赤に次いで3番目に人気の色です。自然に触れるとストレスや不安が軽減されるように、緑色にも身体や心に安らぎを与えます。病院などにグリーンが使用されるようになったのは比較的最近のことで、1914年に世界で初めて緑色の手術室がつくられました。

紙面のキャプチャ

かわいい色の代表ともいえるのが、ピンクです。女の子の色となりがちですが、1900年代初頭のアメリカでは逆で、ピンクはよりはっきりした強い色なので男の子にふさわしく、女の子にはよりかわいらしく見せる繊細なブルーが人気でした。

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世界でもっとも酷い色といわれている色を知っていますか?
これは2012年にオーストラリア政府が無地のタバコの箱を際におこなった調査で、Pantone 448Cがもっとも魅力的でない色となったためです。もちろん、公式には酷い色というのは存在せず、「深く豊かなアーストーン」と主張されています。ちなみに調査で人気だったのは青や緑で、茶は腐った食べ物や泥を連想させるからです。しかし、このダークブラウンの忌避特性を利用したものはこれが最初ではなく、1960年代のアメリカで従業員がトイレ休憩を長引かせないようにするために448Cに似た色合いに塗り替えたというのもあります。

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最強の美人服といわれているのが、ダイアナ妃やオードリー・ヘプバーンも身につけていたリトルブラックドレス(LBD)です。黒は理知的で知性的な価値をもつと同時に、矛盾した両義性をもっており、「リトルブラックドレスが似合っているなら、ほかに着るべきものはありません」とウィンザー公爵夫人ウォリス・シンプソンの言葉があります。

紙面のキャプチャ

Appleの白に見えるほどごく淡いグレーの色は、「ムーングレーⅢ」「シーシェルグレー」という名がついています。白をもっともクールな色にしたのは、Appleの大きな功績のひとつと言えるでしょう。これはジョナサン・アイブが白を推奨したことがきっかけでしたが、ジョブズは「ぼくは嫌いだな」と言ったそうです。

色のコードを読むの目次

色のコードを読むの目次

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思わず「へぇー」「ほぉ」と言ってしまうような、色の見識を深められる一冊でした。自分が好きな色、気になる色、そして興味があまりなかった色でも本書を読むと、色に関する見方が変わるかもしれません。

色のコードを読む

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ISBN 978-4-8459-2117-1
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著者: ポール・シンプソン
訳: 中山ゆかり
出版社: フィルムアート社
発売日: 2022/12/24

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