映画とタイポグラフィが大好物な人に、珠玉のデザイン書 -SF映画のタイポグラフィとデザイン
Post on:2020年9月4日
映画が好き、タイポグラフィも大好物、映画とタイポグラフィを愛するすべての人に多くの発見をもたらす珠玉のデザイン書を紹介します。
SF映画において、タイポグラフィとデザインがどのように未来を視覚化しているのか、近未来的ビジョンを作り出しているのか。SF映画のストーリーテリングとデザインの関係を深く掘り下げた解説書です。
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本書は少し大きめのA4版で、オールカラー268ページの贅沢な書籍です。お値段も!と思うかもしれませんが、非常に良心的な価格だと思います。
SF映画、そしてタイポグラフィとデザインの深淵まで楽しめる一冊です。
版元様より許可をいただいたので、紙面のキャプチャを少しだけご紹介。
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本書はTypeset in the Futureの運営者であるDave Addey氏による、SF映画におけるタイポグラフィとデザインをめぐる研究を書籍化したものです。「2001年宇宙の旅」「エイリアン」「スター・トレック」「トータル・リコール」「ウォーリー」など、SF映画がタイポグラフィでいかにして説得力のある未来像を描き出してきたかについて分析されています。
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例えば、Eurostileというフォントがあります。中でも、Eurostile Bold Extendedはたくさんの映画の中で未来を視覚化してきました。
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未来を視覚化するためには、タイポグラフィの定番テクニックがいくつかあります。斜めに傾けたり、カーブを丸くしたり尖らせたり、スライスしたり、メタルにして使用されています。
Adobe Illustratorでのチュートリアルが版元様のWebマガジンで公開されています。
実践「THE RULES:未来的テキストルール」
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1つ1つのテクニックはシンプルですが、組み合わせることで、さまざまなタイポグラフィが完成します。実際に、多くの有名映画のロゴにも使用されています。
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2001年宇宙の旅
本書で取り上げられている映画は、7本です。
映画で使用された書体、書体の歴史的背景、タイポグラフィによって作られた視覚的なストーリーテリングなど、詳細な考察が多くの発見と刺激的なインスピレーションに触れることができます。
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2001年宇宙の旅
タイトルに使用されているGill Sans、ディスカバリー号の人工冬眠装置のインターフェイスに使用されているFutura Bold、宇宙ステーションに使用されているUnivers 59 Ultra Condensedなど、各書体がどのように使用されているか詳しく解説されています。
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エイリアン
エイリアンのタイトルに使用されているのは、Helvetica Blackです。この文字の間隔を大胆に広げるというタイポグラフィは、その後のさまざまな映画にも使用されてるようになりました。
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スター・トレック
スター・トレックのタイポグラフィが大好き!という人は「The Star Trek Font Pack」を持っているかもしれませんね。公式に認可されたフォントパックで、現在では入手困難になっています。個別なら、FontShopから購入できます。
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ブレードランナー ファイナル・カット
ブレードランナーのオープニングクロール(左ページ)で使用されているのは、Goudy Old Styleです。秀逸なのは、文中で恣意的に大文字が使用されていることです。大文字が使用された単語には、強い印象が残るようデザインされています。
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トータル・リコール
トータル・リコールでは近未来の日常的なシーンもたくさんあります。VRの映画やスポーツ、実際の風景が映るワイドスクリーンの窓、Photoshopのように簡単に色がつけられるネイルなど、手が届きそうな未来が登場しています。
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ウォーリー
ピクサーのウォーリーに使用されているのは、Gunshipです。英語表記は「WALL·E」で、ドットは中黒であり、ハイフンやビュレットではありません。またフォントを見るとよく分かるのですが、厳密に言うと「waLL·e」です、Gunshipの文字一覧を見ると「wae」の小文字は「WAE」のような見た目で、「LL」は角どばった大文字が使用されています。
考察が深すぎます!
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月に囚われた男
映画の中ではほんの一瞬しか映らないシーンに、貴重な情報があったりします。拡大しないと分からないような文字にも注目し、何が書かれているのか、それは何を意味したものなのか、映画の深いところまで探っていきます。見たことがある映画でも、必ずもう一度見たくなります!
SF映画のタイポグラフィとデザインの目次
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SF映画のタイポグラフィとデザインの目次
映画好きにも、タイポグラフィ好きにも、両方が大好物の人には特にお勧めの書籍です。映画を主軸にした解説の他にも、映画監督や書体デザイナーへのインタビューも掲載されており、舞台裏の話なども語られています。
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