デザインの現場は常に進化している!Photoshopの地味で時間がかかるプロのテクニックが詳しく解説された良書
Post on:2017年4月7日
Photoshopのチュートリアルの紹介で「簡単にできる!」というテクニックはたくさんあります。しかし実際にやってみると、「うまくいかない」「思っていたのと違う」ということがよくあります。
原因はそのチュートリアルとやりたいことが、まったく同じではないからです。
思い通りの結果を得るためには、Photoshopで使用するツールの機能と効果を理解する必要があります。1クリックや感覚的に操作するだけではなく、正しい知識と詳しい解説でPhotoshopの操作をしっかり学べるオススメの一冊を紹介します。
本書はPhotoshopでのレタッチのテクニックだけでなく、プロの仕事術としてフォトディレクションやRAW画像の扱い方や写真の光の扱い方など、写真をPhotoshopで扱う際に必要な知識が詳しく解説されています。
扱われている素材は人物写真という最も難易度が高い素材で、基本的なレタッチからデザインの現場で使用頻度の高いさまざまなテクニックを学ぶことができます。
もちろん人物以外の写真にも役立ちます。
Kindle版は値段が少し安く、お得です。
では、そんな本書の中身を紙面のキャプチャで少しだけご紹介。
いきなりテキストだらけのページですが、何をするにも理由や目的は非常に大切です。単に美しくするだけでなく、画像を使用するコンセプトに沿って魅力的にすることが、よいデザイナーの条件と言えます。
最初のページから本書への期待が高まりますね。
Photoshopの大きな特徴の一つが、似たような効果になるたくさんの機能があることです。例えば、写真を明るくしたい時に、「明るさ・コントスト」「レベル補正」「露光量」で簡単にできます。しかしその画像にあった機能を選択する必要があり、単独の機能では思い通りにいかないことも多いと思います。
プロが使う実践的なテクニックも非常に充実。
Photoshopで選択範囲の作り方、修復機能、シャープネスなど分かりやすく、そして詳しく解説されています。
最後の章では現場のテクニックとして、地味だけど作業効率を追求したさまざまなテクニックがチュートリアル形式で解説されています。
中身をもう少し見てましょう。
本書ではレタッチのテクニックだけでなく、フォトディレクションについてトータル的に解説されています。Webデザインで撮影から手がけることは少ないと思いますが、私が参加したとらや(※現在の一つ前です)のサイトではすべての和菓子を撮影から手がけていました。
レタッチの作業に入る前に、環境を整えることは非常に重要です。モニターやPhotoshopのカラー設定が正しくないと、画像をレタッチする意味がありません。
モニターの設定もPhotoshopの設定も非常にくわしく解説されています。私もこれを読んで、さっそく見直してみました。
素材となるRAWファイルの扱い方も大切です。JPEGやTIFFにする前に、どのような処理が行われているのか知っておくことはレタッチにも役立ちます。RAW画像にしかできない処理、RAW画像の方がより高品質になる処理もあります。
1-4章は準備で、5章からレタッチの本番です。
レタッチに入る前に、Photoshopの作業環境を適したものにしておきましょう。レイヤーパネル、属性パネル、チャンネルパネル、パスパネル、情報パネルなどは、画像の現在の状態を正確に把握するために、すぐに見えるように配置しておきます。
調整レイヤーやトーンカーブなど、補正に重要な機能やなぜこうなるのか仕組みが非常に詳しく説明されています。
「なぜ」が分かると、それらの機能が思うように使いこなせるようになります。
Photoshopはなんとなく使用してもそれなりの効果は得られますが、正しい知識を学ぶことで今まで以上の効果が得られます。
6章の実践テクニックでは、補正する際に必要な選択範囲、修復機能、CMYK変換、シャープネスについてより詳しく解説されています。
Photoshopでは選択範囲を作成するための機能がたくさん用意されています。基本的なクイック選択ツールや自動選択ツールをはじめ、新しく搭載された変更点も含めて、それぞれの特徴、使い方のコツなども非常に詳しいです。
最後の7章では、作業効率を追求したテクニックを積み上げるチュートリアルです。
高精度な切り抜き、色成分とテクスチャ成分を分離したハイパスを使ったレタッチなど、みずみずしい肌、健康的な陰影、風になびく動きのある髪、地味で時間がかかるプロのテクニックが詳しく解説されています。
付録も非常に実用的です。
よく使うショートカットの紹介、、、は普通に見かけますが、使わないショートカットを削除することで、ツールを素早く切り替えることができます。キャプチャはほんの一部ですが、この他にも実用的な使い方が数多く紹介されています。
Photoshopレタッチ・プロの仕事の目次
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- フォトディレクションの現場から
- はじめに なぜ画像をレタッチするのか?
- アイデアのラフスケッチを作成する
- 提出用のラフカンプを作成する
- スタッフや撮影場所、撮影プランを検討する
- 撮影する
- 合成・レタッチする
- レイアウトと色校正
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- 補正環境を整えよう
- モニターを調整する
- Photoshopのカラー設定
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- 画像と光の基礎知識
- 画像ファイル形式の種類
- 写真の光を見極める
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- RAW現像
- RAWファイルの基本
- Camera Rawによる現像処理
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- Photoshopレタッチ〈基本テクニック〉
- レタッチを進める手順
- Photoshopのカラー設定作業環境を確認する
- 調整レイヤーとの組み合わせ方
- トーンカーブの基本を身につける
- 特定色域の選択
- その他の役立つ補正機能
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- Photoshopレタッチ〈実践テクニック〉
- 選択範囲について
- 選択範囲を作る
- 選択範囲を調整する
- トーンカーブを使いこなすテクニック
- 修復系の機能を活用する
- 塗りによる補正
- CMYK変換
- シャープネス
- ファイル形式の特性を知っておく
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- 人物写真補正のテクニック事例
- 逆光で暗くなった部分を明るく補正する
- 日陰でくすんだ画像を鮮やかにする
- 人物のシワを自然な雰囲気で目立たなくさせる
- 子どもをもっと健康的でかわいらしく見せる
- スナップショットから人物を際立たせる
- 人物の顔を選択範囲とトーンカーブで自然に白く
- 肌のムラをトーンカーブとマスクで修正し、補正の下地を作る
わたしはデザイナー職ではないですが、優れたデザイナーたちと多くのプロジェクトを共にしました。そんな彼らの仕事ぶりを垣間見ているようで、楽しめた一冊です。
献本の御礼
最後に、献本いただいたMdNコーポレーションの担当者さまに御礼申し上げます。
当サイトでは随時、献本を受け付けています。
お問い合わせは下記よりお願いいたします。
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